ガラス作りから、山奥でのそうめん作りへ
――いつから清流素麵作りに関わり始めたんですか?
森林組合さんが三十七年間やられていた清流素麵の製造を昨年八月にやめることになり、
私ども株式会社グラスキューブという、全く異業種のガラス業界の会社がこの事業を購入して清流素麵をやっていこう、となったわけです。
――どうして異業種の清流素麵を始めることになったんですか?
私どもの株式会社グラスキューブの社長が、以前から六次産業にとても興味を持っていて、その第一歩として、今の生産を始めました。
――社長さんからそうめん作りやるよ、って聞いたときどう思われました?
びっくりしましたね。ただただびっくりですよ。ほんとの話ですか?ゆうて(笑)。
実際自分らもこんな山の中でそうめんを作ってるなんて知らなかったもんですから。
でも、なんか面白そうだな、と興味を持ったのは実際のところで。
自分も山とか川とか自然大好きなんで、利賀村に行くことにも抵抗は全然なかったですし、
逆に楽しみかなという感じでやって来ました。
――山や川などの自然がお好きなんですね。畑井さんのご出身も自然豊かな場所ですか?
僕ですね、生まれは青森なんですよ。十八の頃から和菓子と洋菓子を作っていて、約二十年間パティシエをしていました。
その時に製菓衛生師という資格を取っていたのが、このそうめんの事業をやる時にお呼びがかかった理由でもあったんですよ。
そうめん製造に必要な資格があって、製菓衛生師か調理師免許を持っとればすぐ取得できる、ということだったんですね。
――本当に昔のお仕事がつながってたんですね。
なんかね。笑
――実際村で働き始めてみて、どうでしたか?
楽しいですねえ。
まぁ今もやってみて面白いし、日々どうやればもっとうまくいくとかいう研究もしながら、
いいものを作りたいという気持ちでやってますね。
とびきり長い麺と、利賀の風土
――清流素麵ならではの特徴を教えてください。
やっぱりとびきり長い麺じゃないですかね。あのままで茹でたらみなさん立ち上がってもう、ね(笑)。
あれが、他と違って付加価値をつけとる一つの大きな特徴。
あとは、清流素麵の伝統的な形。あれはやっぱり、ベテランのおばちゃんたちの手に染み付いた感覚でしかなかなかできないよね。
実際自分もどうしたらいいんか頭ではわかっとっても、あの形にするのには二、三日はかかりますね。
――利賀村だからこそ美味しく作れるポイントはありますか?
やっぱり水と、ここの風土じゃないですかね。あとは清流素麵を昔から愛しとる地元の方。
――水が綺麗だといいんですね。
そうですね。街の水と、やっぱり違いはあると思いますけどね。
富山の高岡で三十度あったときでもここでは二十四度で、涼しい環境の中でできるんでね。
――涼しいと美味しくなるんですか?
そうめんは、元々冬の空気が乾燥しとる時期に作るんですよ、全国的にね。
冬が一番最盛期というか、作りだめするには一番適した環境だと思いますね。
――清流素麵のおすすめの食べ方はありますか?
おすすめはやっぱり、普通に食べること。二分間茹でて、氷水で洗って締めて、食べるのがやっぱり一番美味しいでしょうね。
あとアレンジの仕方としては、伸びにくい性質ってのもあるんでね、にゅうめんにして温かいだしで食べるとか、
そういうのでも十分楽しめると思います。
後は、お弁当にも使えます。子供たちにも大人気ですし、小さい小玉にして入れてめんつゆを持たせて、
お昼でもコシが強くて美味しいので大活躍です。
今度みなさんも入れてみてください。
利賀でしか作れない清流素麵を、今後も作っていきたい
――清流素麵づくりの今後のビジョンについて教えてください!
今までは清流素麵一本でやってましたけど、レストランとかで食べられるような業務用ですとか、
蕎麦と茶そば、そして清流そうめんを合わせた高級麺セットを作る予定で、色々試作を繰り返していますね。
その高級麺とかも、純国産の小麦粉を使ってやってみたりしています。
――色々な試行錯誤をなされたんですね。その清流素麵をどのような方に楽しんで頂きたいですか?
元々利賀村におって他県とかに出られる人が沢山おるんで、村に残った方々がその人達に発送してくれとるんですよ。
だから、そういう人達にもっと食べて頂けたらなと思っております。あとは、いま販売ルートを拡大しとる最中ですので、
全国の皆さんにも食べて頂きたいですね。
――地元の方々が村を出た方に清流素麵を届けて下さってるんですね。
そうですね。僕、毎日天竺温泉に行くんですけど、地元の方が『清流素麵順調に進んでますか〜』といつも気にして下さるので、
皆さん清流素麵のこと好きなんだなって思いますね。
特に、私が利賀に来てからまだひと月の時、そうめんの工場も清掃しかできとらん状況なのに、
『いつできますか』という声がたくさんあったのが、とても嬉しかったですね。
――地元の皆さんは清流素麵のことを大切に思ってらっしゃるんですね。
長年やってきた職人、おばちゃんたちも、地元や清流素麵のことを愛しとるんだなと思いますね。
自分らで作った清流素麵を親戚や知り合いに送ったり、利賀の行事に使ったりしとるみたいなので、
そういう所から従業員の皆さんそれぞれが清流素麵のことを大事に思っとるんだなと感じます。
そういった従業員の皆さんの思いも含めて、利賀でしか作れない清流素麵をこれからも作っていきたいですね。
畑井・真也(はたい・しんや)
インタビュー・赤澤遼 田中芽衣 平島美海